透析コラム
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「腎移植と透析はどっちがいいの?」
「透析治療と腎移植の違いを知りたい」
腎移植は、透析治療と同様に末期の腎不全患者に対して行われる治療方法の1つです。
透析治療では、腎臓の代わりに余分な水分や老廃物を除去できますが、100%の腎臓機能をカバーするわけではありません。一方、腎移植はかなり
正常に近い腎機能を得ることができます。ただし、腎移植は移植を受けるための基準が定められており、末期の腎不全患者さんの全てが対象になるわけではありません。
今回は、透析治療と腎移植の違いについて解説し、最後に腎移植の最新情報もお伝えしたいと思います。
腎移植とは、腎臓を移植することで腎臓の機能を回復させる治療方法です。対象者は「末期腎不全患者」で、血液透析や腹膜透析に代わる治療方法として選択されています。
腎移植を受けるためには、まず、腎移植適応基準をクリアしなければなりません。
そのためには、末期腎不全患者であることが第一条件です。透析治療を続けなければ、生命維持が困難であると判断された場合や、近い将来に透析治療の必要がある「保存期慢性腎不全」も対象になります。
また、臓器移植には一定の免疫力が必要となるため、「全身感染症」を発症していないことも条件です。胃がんや大腸がんといった「悪性腫瘍」を罹患している際には、腫瘍の増悪の危険性を考慮して腎移植の対象外になります。
その他、慢性肝炎や肝がんの原因になる「活動性肝炎」に罹患している患者さんは、肝機能の悪化要因となるため腎移植を受けられません。
腎臓を慢性腎不全の患者さんに提供するには、腎機能が良好であることが条件に挙げられます。また、どんなに腎機能が良好であっても、70歳以上の方は臓器提供者になることはできません。
さらに、腎臓提供者になる方は
上記の疾患に罹患していないことも条件になります。
なお、悪性腫瘍に関しては、原発性脳腫瘍と治癒が確認されているものは除かれています。
腎移植の種類は、腎臓提供者の生死により、生体腎移植および献腎移植に分類されます。
腎臓は、身体の左右一対に存在する臓器です。そのため、正常な腎機能を維持していれば、片方の腎臓でも体内の生理機能を一定に保てます。
従来の生体腎移植は、親子間での移植が大半を占めていました。ですが、免疫抑制剤による拒絶反応の抑制や血漿交換術の発展及び開発により、遺伝に関連していない夫婦間の移植も可能とされています。さらに、血液型不適合間の腎移植も増えつつあります。
基本的に、全ての末期腎不全の患者さんが生体腎移植の対象者です。
ですが、移植手術を受けられる体力や、心臓・肺・肝機能といった臓器に異常がないことも重要になります。加えて、移植手術後には、心身に気を配りながら医師の指示通りに服薬できる「自己管理の姿勢」も、腎移植に対する大切な要素の1つとして考えられています。
献腎移植とは、病気や事故で亡くなった方から腎臓移植を受ける方法です。医学的には死体と診断された体から腎臓を摘出するため、健康な人の体を傷つけることはありません。
心臓死からの移植と脳死からの移植の2種類があり、献腎移植を希望する際には、予め臓器移植ネットワークに登録しておく必要があります。移植までの待機期間は平均15年程度とされています。
腎移植には、いくつかのメリットとデメリットがあります。
腎移植の一番大きなメリットは、生活の質(QOL)が高いことです。
透析治療では、体内に蓄積した余分な水分や尿毒素をある程度は除去できます。しかし、造血・骨代謝・血圧調整に関連する内分泌作用の補填はできません。透析治療に伴う合併症を発症する可能性も高くなり、患者さんのQOLを低下させる要因になります。
腎移植を行うと、透析治療による制限から開放されるため、食事を楽しめるようになります。就業や就学も可能となり、さまざまなスポーツにも挑戦可能です。
女性は妊娠及び出産が制限されなくなり、子どもの場合には、健常者と変わらない発育が期待できます。
さらに、腎移植では生存率の向上が期待できます。腎移植後の10年後の生存率はおおよそ90%とされていますが、透析治療の場合は50〜80%です。
腎移植をすることで、完全に腎臓病を克服できるわけではありません。
移植した腎臓の状態を維持するためには、免疫抑制剤の内服と定期的な通院による検査が大切です。
移植後には、拒絶反応が起こる場合もあり、免疫抑制剤による副作用にも注意しなければなりません。副作用の中でも重大な問題として、感染症と悪性腫瘍が挙げられます。
近年では、免疫抑制剤の改良により、拒絶反応の危険性も減少の傾向にあります。悪性腫瘍に関しては、定期的な診察を受けるといった早期発見が欠かせません。
生体腎移植の場合は、健康なご親族の方などから腎臓を1個頂くことになります。ドナーの方の腎機能は少し下がりますから、将来の健康不安が全くないわけではありません。
そのため、倫理面を考慮すると生体腎移植よりも献腎移植の方が優先されるべきです。しかし、現状はドナー不足のため腎移植の9割は生体腎移植によるものです。
透析治療は、腎臓の代わりとして体内の余分な水分や老廃物の排出が可能です。しかし、透析治療だけでは埋められない、腎臓の機能もあります。
そのため、長期間に渡り透析治療を行うと、高血圧や動脈硬化といった多くの合併症を発症しやすくなります。合併症が悪化すると、心筋梗塞、心不全、脳梗塞などを引き起こす可能性もでてきます。
腎移植は、移植後の機能が安定していれば、ほとんどの腎臓機能を代替可能です。透析と比較しても、合併症を発症しにくいという特徴もあります。通院回数も状態が安定してくれば1ヶ月に1回程度に減ります。
ただし、移植した腎臓が一生機能し続けるとは限りません。拒絶反応によって機能を失い、人工透析や腎臓の再移植が必要になる場合もあります。
透析と腎移植はどちらも一長一短がありますので、どちらが優れているかを一概に言えるものではありません。ただし、医学的な面から考えれば、腎移植の優位性はゆるぎないものがあります。
透析も腎移植も同じ腎代替療法ですが、腎移植の方が腎臓を代替できる質と量が高いのです。また、上記のように腎移植の方が圧倒的にQOLが高く、生命予後も透析より長いのです。
日本はドナー不足の問題もあり、腎代替療法としては95%の方が透析を選択されています。透析は保険制度の充実もあり、どなたでも受けられやすいというメリットがあります。
また、頻回に通院するため、病気の早期発見につながりやすく、安心して医療を受けられるというメリットもあります。特に、高齢者の方は腎移植の適応が難しいため、透析を選択せざるを得ないこともあります。
透析治療と腎移植のどちらが優れているかという問題は、一般的には腎移植の方が優れていると言えますが、ベストな治療法の選択は患者さんの医学的、社会的条件によって影響を受けることになります。
最近は先行的腎移植というものが増えてきています。以前の腎移植は透析をある程度経験してから、腎移植を行うというケースがほとんどでしたが、先行的腎移植は透析を経ずに腎移植を行います。
透析をしばらく経てからよりもすぐに移植したほうが生着率や腎機能が長く温存されると言われています。また、血液透析のための血管手術(シャント手術)や腹膜透析のための腹膜透析カテーテルの留置が必要ないというメリットもあります。
先行的腎移植は主に小児に対して行われていましたが、現在は大人でも行われるようになってきました。
もう一つの腎移植の話題は、ブタの腎臓を移植する異種移植です。ブタの腎臓のサイズはヒトと同じぐらいで、機能的にもヒトとほぼ変わりません。
以前はブタからヒトへの移植は拒絶反応が強く、ブタ特有の感染症の問題があり、臨床応用が困難とされていました。しかし、近年の遺伝子改変技術の進歩により拒絶反応の少ないブタを作成することができるようになりました。
2024年3月、米国で維持透析の患者さんにブタからの腎移植が行われ、患者さんは無事に退院しました。ブタの異種移植は拒絶反応や感染症を安定して制御できれば、腎不全医療を大きく変えるでしょう。
iPS細胞からの腎臓再生も少しずつですが研究は進んでいます。腎臓は複雑な構造をしており、最も再生することが難しい臓器の一つとされています。熊本大学はiPS細胞から3次元の腎臓組織を再生することに成功しました。
ただし、ヒトのサイズの腎臓を得るまでには至っていません。東京慈恵医科大学病院ではブタとiPS細胞を融合したハイブリッド臓器での移植も計画されています。iPS細胞からの腎臓再生は拒絶反応の心配がなく、期待が高い治療法です。
腎機能が悪化すると、余分な水分や毒素が排出されにくくなるため、身体に大きな負担がかかります。
疲れやすさや尿が出にくいといった症状が現れたら、早めに医療機関を受診しましょう。もし末期腎不全になった場合は、透析か腎移植を選択する必要があります。
東京ネフロクリニックでは、2023年4月に最先端技術とされる「電解水透析システム」を導入しました。従来の透析治療では難しいと考えられていた、自覚症状と合併症を改善できる注目の透析治療です。
さらに、専門医による腎移植や再移植の相談や、移植後に再び人工透析が必要となった患者さんのサポートにも取り組んでいます。腎移植を実施している東京女子医科大学病院やその関連施設と連携しています。
JR山手線と東京メトロ南北線の「駒込駅」から徒歩わずかと、高い利便性も特徴です。透析治療や腎移植でお悩みの方は東京ネフロクリニックへご連絡ください。
公式サイト | https://tokyo-nephro-clinic.com/index.php |
透析可能時間 | 8:30~23:30 |
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