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透析患者さんはがんになりやすいのか?

がんは一生の間に2人に1人がかかる頻度の高い病気です。3人に1人ががんで亡くなります。当然ですが、透析患者さんもがんにかかります。それでは、一般の人たちと透析患者さんでは、どちらががんに罹りやすいのでしょうか?この疑問は、1970年代頃から海外で本格的な調査が始まり、日本人も含めてほとんどの論文では透析患者さんの方ががんに罹りやすいという結果でした。そして、尿毒素ががんを誘発するのではないかという仮説が唱えられてきました。ところが、最近になって透析患者のがんのリスクはがん種によってかなり違うことがわかってきました。そして、頻度の高いがんの種類は、一般人と透析患者では全く異なります。日本人に多いがんは肺がん、乳がん、前立腺がん、大腸がん、胃がんが代表的ですが、透析患者さんではそれらのがんは比較的少ないのです。その代わり、透析患者さんは腎がんや膀胱がんが圧倒的に多いのです。

一般的に、異なる性質を持った集団の病気のなりやすさを比較することは、実は簡単ではありません。一般人と透析患者のがんのリスクを比較するのも同様です。両者の背景因子を完全に一致させることは不可能に近いからです。例えば、性別は一般人の男女比はほぼ1:1ですが、透析患者は男性が女性の2倍近く多いです。さらに、年齢、食事内容、運動量、内服薬、受診頻度、などなど、一般人と透析患者の背景因子はかなり異なります。統計学では背景因子をいろいろ調整して数値を計算しますが、すべての背景因子を揃えるのは限界があります。ですから、疫学調査の統計の数値を鵜呑みにするのは危険なのです。医療従事者はその数値が実態に即しているのかどうかを検証する必要があります。なぜなら、疫学調査の結果が医療政策に反映され、無駄な検査や治療が行われることになるからです。

結論を言えば、透析患者は一般人よりもがんになりやすいとは一概には言えません。また、がんで死にやすいということもありません。透析患者のがんの特徴についてはまた別の機会に述べたいと思います。

院長

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