東京ネフロブログ
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慢性腎臓病の原因は糖尿病や高血圧が背景にあることもありますが、透析患者の原疾患の第2位は慢性糸球体腎炎といわれる腎臓の炎症で、透析患者の約1/4を占めています。慢性糸球体腎炎の発症メカニズムには免疫異常が関与していることが示唆されていますが、まだ完全には解明されていません。腎臓病とがんの共通点として、比較的高齢者に多い病気ということがあります。慢性糸球体腎炎は若い方も多いのですが、組織レベルで腎臓を見ると、炎症のあとに老化した細胞が見られます。老化した細胞がそのまま残存し、蓄積してくると腎機能が悪化してきます。腎臓には尿細管から血管内に糖を運ぶSGLT2(ナトリウム・グルコース共役輸送体)という物質があります。はじめ、SGLT2阻害薬は血液中の糖を尿に排出することにより、血糖を下げる糖尿病治療薬として開発されました。その後、SGLT2阻害薬は腎機能の改善効果があることもわかりました。このメカニズムとして、老化細胞の除去が挙げられます。最近、SGLT2阻害薬が腎臓の老化細胞を除去する働きがあることが報告され、腎臓病だけでなく、心臓病や肥満など他の加齢関連疾患の予防と治療に役立つと期待されています。新規のセノリティクス(老化細胞除去薬)の開発は最近急に増えています。
がん治療薬で免疫チェックポイント阻害薬というのがあります。PD-1という分子を阻害するオプジーボという薬が有名です。がん細胞を攻撃するTリンパ球は老化してくるとPD-1を発現するようになります。そこで、オプジーボを投与すると、Tリンパ球のPD-1が阻害され、Tリンパ球は再び活性化されます。がんの原因の一つに、Tリンパ球などの免疫細胞の老化が関与していると言われています。一方、がん細胞にはPD-L1という免疫チェックポイントを発現しているものもあります。PD-L1に対する抗体によりPD-L1を阻害すると、Tリンパ球が攻撃しやすくなり、がんを治す効果があります。最近、老化細胞の一部はこのPD-L1を持っていることがわかってきました。高齢マウスや生活習慣病マウスに抗PD-L1抗体を投与すると生体内から老化細胞が除去され、老化現象が改善できることが私の研究室から報告されました。抗PD-L1抗体はもともとがん治療薬ですが、老化細胞を除去する働きもあることから、腎臓病などの加齢関連疾患にもその効果が期待されています。
以上から、腎臓病もがんも老化が原因になっている可能性があります。しかし、老化ががんの直接原因であるとするエビデンスはまだ十分ではありません。例えば、老化はもともとがんになるのを防ぐ働きがあることが昔から知られており、逆説的です。また、小児がんや白血病など、若い人がかかりやすいがんも老化で説明できるのか、100歳を超える超高齢者にはなぜがんが少ないのか、など、まだ不明な点が多く残されています。ただし、がんを含めた多くの病気が加齢とともに増加するのは周知の事実です。日本人の高齢化とともにがんが増加していることを考えれば、老化ががんの原因であっても不思議ではありません。がんの原因を探る歴史は長く、老化とがんの因果関係を調べる研究はまだ緒についたばかりです。