東京ネフロブログ
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通勤電車で唯一の楽しみが本を読むこと。
「博士の愛した数式」小川洋子著 新潮文庫
本屋で手に取りパラッとめくったら、数字や数式が目についたので数学マニアの本かなと思って読みましたが、全然純文学でした。帯に「270万人が泣きました。」と書いてましたが、涙は出ませんでした(笑)。
「素数の性質が明らかになったとしても、生活が便利になる訳でも、お金が儲かる訳でもない。・・・(中略)・・・・真実を見出すことのみが目的なのだ」「実生活の役に立たないからこそ、数学の秩序は美しいのだ」
研究者の端くれにとって、勇気を与えてくれる言葉がいっぱい散りばめられていました。
「ニュースの数字をどう読むか-統計にだまされないための22章」トム&デヴィッド・チヴァース著 北澤京子訳 ちくま新書
新型コロナ感染症が流行っていた頃は、ニュース番組で放送される感染者数や死亡者数を見て毎日一喜一憂したものです。しかし、それらの統計や将来予測の数字は本当に現実を表しているのかと、ふと疑問に思ったことがあります。日常のニュースは常に新しい情報をアップデートしなければならず、またより多くの人に読んでもらうために数字を使ってセンセーショナルに伝えようとします。一方、基礎研究者は自分の仮説が正しいことを客観的に検証しますが、成果を誇りたいので、統計を使って意味のある結果であることを強調します。メディアも基礎研究者もより多くの人に知らせたい、主張したい、注目してもらいたい、という欲求が根底にある。統計はその欲求を満たすのに都合のいい道具として悪用されることがあります。名著だと思いました。
「グレート・ギャッツビー」F・スコット・フィッツジェラルド著 野崎 孝訳 新潮文庫
本の名前はよく知っていたのですが、初めて読みました。やはり、私のような理系人間にはこの手の純文学を読むのは骨が折れます。何しろ日本語の翻訳が格調高すぎて、ストーリーに入りにくかった。アメリカは昔から主人公のような大富豪がいて、彼らにとってはバラ色の人生だったのでしょう。ただし、その影には搾取されていた人たちもいて、それを当たり前とする世の中の価値観があった。勝った人がすべての富を頂くという考え方は、今も昔もこの国では変わっていないと思った。ボストンに住んでいる頃に行ったことのあるニューヨーク近郊の別荘地を思い出しながら読みました。